アルゴット教室



CONTIGO,PAN Y CEBOLLA

 夏シンプルなテーマに単純なストーリー構成、まったくの正攻法で描かれるスペインの土着的なエロティズムー94年のルイス・ベガ監督作品「ハモン・ハモン」は最近のスペイン映画のヒット作の中でも痛快なおもしろさがあります。「あれはポルノだ。」と言い切ってしまう人もいるのですが(実際日本のビデオショップでポルノのコーナーに置かれているのを見たことがある)、作品全体の根底に流れる皮肉のこもったユーモアに、この国の人々の人生観を垣間見ることができます。特におもしろいのは、ストーリーの肉付けとして、闘牛、パエーリャなど、いわゆる“いかにもスペインらしい”ものがたくさん出てくることです。これも典型的なスペインのつくられたイメージに対する一種の皮肉なのですが、その中でもテーマのエロティズムに彩りを添えるものとして、実に数多くの食べ物、また食事のシーンが出てきます。この映画自体実はアルゴット(俗語)の宝庫なのですが、今回はその中に出てきたスペインの代表的な食べ物にまつわるアルゴットを紹介してみましょう。

 まずはスペインといえば“ハモン”(生ハム)。映画のシーンでも男が女に メチY tu'eres jamonera!モ と叫ぶ場面がありますが、これは俗っぽい piropo (お世辞)の一種で、“いい女!”の意。“おいしそう”の感じがよく出ています。 モチUn jam溶 !モ と叫ぶと“まっぴらごめんだ!”の意味。そして同じ仲間のチョリソになると chorizar でこそ泥をする、万引きするなどの意味、そのこそ泥は chorizo と呼びます。エクストラマドゥーラの人を chorizero と呼ぶこともあります。このハム、チョリソの類とパンを1本、そしてチーズとワインというのがスペインでの遠足や小旅行の時の必携グッズとなるのですが、このチーズ Queso は darla con queso a で人をだますの意味。quesos と複数で足を指すこともあります。パンに関しての言い回しは、ser un pan, ser ms bueno que pan と人の良い人を指していったり、反対に pan sin sal (やぼな人、薄のろ), es pan comido (そりゃ簡単なことだ)、ser el pan de cada d誕 (よくあること)、Con su pan, se lo coma (やつの問題だ、こっちの知ったことか!)などとたくさんあります。Contigo, pan y cebolla. (あなたとならば貧乏暮らしもいとわない)という有名な句がありますが、この cebolla (玉ねぎ)もスペイン料理に欠かせないもの。煮たり焼いたりするより、生で丸噛りするのが好きーと言う人もけっこういます。アルゴットでは“頭”の意味もありますが、よく子供同士でいうふざけ文句で Si comes cebolla, te crece la polla. なんてのもあります。生で噛るといえば、前出の映画ににんにくを丸噛りするシーンがありますが、これも言い回しに使われることが多い、スペインの代表的な食材。 Andar el ajo (内情に通じている)、estar harto de ajos (育ちの悪い)、revolver el ajo (面倒を起こす)、tieso como un ajo (思い上がった)など。Ajo y agua (a joderse y aguantarse) なんていうのはちょっと日本語に訳しにくい罵り(?)言葉でしょう。

 そしてトルティージャ。材料も作り方もいたってシンプルなのに、その出来具合は人様々で、なかなかおいしく作るのにはコツがいるようです。円盤型のそれをお皿を使って何度もひっくり返して両面を焼くのですが、volverse la tortilla は状況が逆になる、立場が変わるの意味。Hacer tortilla a は何かを打ちのめす、砕くの意味で、追突事故でぐちゃぐちゃに壊れた車を指して、チSe ha hecho una tortilla! と人々が言っているのを聞いたことがあります。

 最後に“食べる”をアルゴットでは papear, jalar, jamar, manducar, tapin~ar と言います。これらの言葉は地方によってそれぞれの使用頻度が違ってきますが、よく学生同士の会話などで耳にしますし、ジプシーや下町の人々を題材にした映画、ドラマなどで頻繁に出てきます。まぁスペインに着いたばっかりの日本人がこんな言葉を使うとびっくりされるのがオチですので、聞いて理解できる程度にとどめておきましょう。