スペイン留学のウソホント



ESTUDIAR ESPAN~OL EN ESPAN~A

 語学留学はもう最近では目新らしいことではなくなってしまったーといわれるものの、いざ留学しようと心に決めるとどきどきしてくる。パックツアーで行く海外ではないのだ。ガイドブックを手にした時点で、すでにカフェテラスで欧米の友人達と談笑する自分の姿がちらついてきたりなんかする。確かにしっかりと目的をもった海外留学は、単に語学を習得するというだけでなく、すばらしい人生経験となることだろう。そのためには出発前のしっかりとした心構えと準備は必要。“行けば何とかなる”というのは最後の最後にいう言葉。きちんとした事前準備は、あとで必ず役立つので怠りなくしたいものだ。

 留学に関するガイドブックはたくさん出ているが、スペイン留学に関してはまだまだ現地発の情報が少ないのが現状。ここでは“留学のウソホント”ということでちょっと辛口のコメントをあげてみた。

★心構え編

1ー最低でも3ヵ月、長くても1年いればベラベラになれる。また長くいればいる程しゃべれるようになれる。

 語学の習得のスピードは個人差が大きいが、初の留学で3ヵ月滞在した時点での語学能力は、大体旅行で困らない程度。この3ヵ月は新しい環境に慣れるのに精一杯となってしまう人が多い。同じクラスにいる自分より低いレベルの欧米人が、3ヵ月後自分よりベラベラになってさっさと母国に帰ってしまうのを見て悔しい思いをしたりする。全く違う文化圏からきた私たち東洋人は最初からある程度のギャップがあるのだと思ってあせらないほうがいい。といっても長くいればいるほどーというのもウソ。ある程度のレベルに達すると、日常生活に困らなくなるので、自分で本を読んだり、文章を書く練習をしたりといった努力をしない限りレベルアップはない。結局は自分のスペイン語に対する興味と努力次第なのだ。まったくの初歩から現地の学校で勉強を始めた場合でも、大体8ヵ月位で文法の習得はすべて終わってしまう。自分の弱点を早めに見つけて効果的な学習をしよう。

2ー現地にいればすぐスペイン人の友達ができる。

 良く考えてみると学校のクラスメートは全員外人、滞在先のアパートも皆外人だったりして、現地にいながら全然スペイン人と知り合う機会が無いと嘆く人が多い。大都会の場合、スペイン語を一言も話さなくても生活できる環境下に入ってしまうことも少なくない。いくら“陽気なスペイン”にいても家にこもってじっとしていたり、どこに行っても黙っていては友達はできない。積極的に外に出たり(バルは格好のスペイン語練習場だ)、知り合った人に話しかけたりして自分を売り込むことはある程度必要。間違ってもかまわない。どんどんしゃべろう。スペイン語上級レベルの人は現地の専門学校に行ってみるという方法もある。

3ー日本人同士で固まるのは良くない。

 これは語学習得という点で考えると本当。しかし海外にいるという特殊状況の中で、同国人同士で情報交換をしたり、励まし合ったりするのは自然なこと。あまり神経質になり過ぎる必要もないが、あんまりべったりし過ぎるのも考えものだ。特に情報交換については、口コミのものなのであやふやなものや私情の入ったものが多く、すべてを信じられるわけではない。最終的には自分できちんと確認しよう。

★生活編

1ー持ってこなくてもいいものリスト

●高価なおみやげ…実はホームステイ先などにおみやげを渡すのは日本人だけ。滞在後、本当に気が合って楽しく過ごすことができた、という感謝のしるしとして小物を贈るのならかまわないが、これから滞在する先に着いていきなりおみやげを渡すのはびっくりされる。皆日本風の小物をーと考えるのか、ホームステイ歴の長いおばちゃんの家に行くと、段ボール箱いっぱいに“日本グッズ”があったりする。物を渡すより、お茶に誘っておごったりした方がよっぽど気が利いてるし、スペイン語の練習にもなると思うのだけれども。

●大量の日常品…例えば生理用品は日本とまったく同じ質のものが売っているので必要ない。薬も胃腸薬、風邪薬などある程度必要だが、スペインの薬局で安く売っているので大量には必要ない。以前無いと言われていた日焼け止めクリーム、コットンの下着、コンタクトレンズの保存液、探すのが難しいと言われていた水着なんかもある。よっぽど田舎に行かない限り、基本的な生活用品は探せばなんでもある。

2ー忘れがちなものリスト

●室内用スリッパ…これを忘れるとトイレに行くにもわざわざ靴を履かなければいけなかったりして、現地で買うまで2、3日不自由な思いをする。短期滞在の人はともかく、丈夫めのものを持っていこう。

●辞書…語学留学で来ているのに、ポケット辞書程度のものしか持ってこない人が多い。レベルが上がるにつれてちゃんとした西和辞典は絶対必要になるし、前述のもので調べ物を済ましていると、いずれ学習に支障をきたしだす。重くても我慢してしっかりした辞書をもってこよう。

●日本のことについて書かれた本…これは必携、なのにけっこう持ってこない人が多い。会話の時間などで日本のことを聞かれて、あんまり自分の国について知らなさ過ぎて情けなくなることが多い。“あなたの住んでいる市の人口は?”“東京から何キロ離れているの?”なんて聞かれることはザラ。スペインのことについて書かれた日本の本も役立つ。

3ーチップについて

まずレストランで食事をした場合、10%から15%位のチップは必要。お釣りの小銭を置く程度でよい。ホテルに宿泊した場合の“枕銭”は100ペセタ程度だが、安ペンションなどではあまり置く人はいない。その他はどんな場合でも、特別なことをお願いした、とか本当に気持ちよく過ごすことができた、という場合だけ、気持ちとして置く程度でよい。バルでの場合も同じこと。常連のおじちゃんとかがたまにチップとして小銭を置いていくのを見るが、若い学生がやっているのはほとんど、というかまったく見かけない。あなたがお金持ちの大名ツアーで来ている観光客なら別だが、黙ってお金を置くより、一言“おいしかった”と言ってくれるほうが嬉しいーというのは、とあるバルのおばちゃん。

4ー食事について

今だにスペインでは1日5回食事をすると書いているガイドブックが多いが、これはウソ。朝、昼、夜の3回の食事を除き、あとの2回はお腹が空いている時におやつ程度のものを食べたり、バルに立ち寄って軽くつまんだりする習慣があるだけで、無理に1日5回もご飯を食べさせられることはない。スペイン人もそこまでヒマではないのだ。住んでみるとわかるが、朝食から昼食までの時間が長いので、11時頃に自然にお腹が空いてくる。我慢せず、周りを見習ってバルに行って何かつまんだりしたほうが授業にも集中できるというもの。あれこれバル巡りをしてみたい人はホームステイ先の夕食はお願いしない方がいい。友人とあれこれタパスをつまんでいるうちに、お腹いっぱいになってしまうからだ。日本食に比べて脂っこく、肉食に片寄りがちのスペイン料理だが、ステイ先でも自分の好みをいえばちゃんと聞いてくれる。ピソで自炊する人は栄養が片寄りがちになってしまうこともあるが、なにせ自分のために作ってしまうので、何カ月いても知っているスペイン料理はトルティージャやパエジャだけ、という情けない結果になってしまう。せっかく食の文化の豊かな国に来ているのだから、日本食、中華レストランに頼りすぎず、積極的にバルなどに出かけて地元の味を堪能してみよう。

 情報の不足から、まだまだ聞くと見るのと大違いーになりがちのスペイン留学。次号にもこのコーナーは続きます。