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BESUGO ASADO いつもの公園で、いつも遅れて来る友人を、いつものように待っている。どこからともなくクリスマスソングが流れてきて、もうそんな時期かと思いながら、通りの向こうにある焼栗屋の様子を眺めている。鼻をくすぐる芳ばしい香りに誘われてか、小屋の前に小さな行列ができ始める。カリッと音をたてて割れるこんがり焼けた皮、ほんのり甘い黄金色の身を思い浮かべ、ゴクンと唾を呑んだところでやっと友人登場、言い訳と一緒に差し出されたその手には、古新聞にくるまれたあったかい焼栗の包が。寒さのせいか、苛立ちのせいか、強張っていた顔つきが弛み、いつも遅れてくる友人は、罪の意識から解放されるのである…。 正直な話、私はこの焼栗が本当に大好きで、家でもよく作る。先日も姑と二人で、大きめの空缶で作った自家製焼栗器で大量の栗を煎りながら、クリスマスの献立を決めたところだ。わが家ではこれといって宗教的な祝い事はしないが、12月24日と31日の晩餐、12月25日、1月1日、6日の昼食は、家族が集まる大事な食事。その献立を決めるだけでもワクワクしてくるのは、なにも私に限ったことではない。話に熱が入り、栗を混ぜ返していた姑の手がとまる。焼番交代となったところで、その典型的なわが家の献立をちょっと紹介すると、まずはオードブル。生ハムやロースを始めとして種類豊富なハム、腸詰類をチーズや甘口のスペイン風錦糸卵などと盛り付けたものが1皿。別にムール貝の詰め揚げ、イカリング、コロッケなどの揚げものが1皿、続いて茹でたカニやエビの類の盛り合わせ。その後、小休止代りにコンソメをカップでー。そしてメイン・ディッシュのトストン(コチニージョ・アサード:子豚の丸焼き)の登場である。晩餐は夜10時頃から始まるのだが、大晦日はこのトストンの頃には時計から目が離せない。スペインではこの日12時の鐘とともに1粒ずつ計12粒のマスカットを食べるのが習慣。口一杯のマスカットを飲み込もうと四苦八苦している間にシャンパンが抜かれ乾杯!となるー。 大晦日の献立も決まったところで、栗も焼き上がったようだ。火から下ろし、布で蓋をしてしばらく蒸らす。待っている間24日のメインディッュの味付けの話となる。メインはベスーゴ・アサードである。今年は私の好みで、にんにくを使わずレモン風味であっさり味付けすることとなった。 ★ベスーゴ・アサード 材料ー1K程の鯛…1匹、レモン…1、2ケ、パセリ…1、2本、塩、オリーブオイル 作り方 1ーうろこを取り、腹わたを取り除いた鯛を冷水で洗い、ふきんで水気を取る。 2ー塩焼する時のように全体にまんべんなく塩をする。腹内部も忘れずに。 3ー鯛の一面(頭を左手にし、上部にくる面)に背骨に対して垂直に2、3本の切れ目を少し深めに入れ、半月切りにしたレモンをはさみ込む。腹の開口部にはパセリと半月切りレモンを詰める。 4ー充分オリーブオイルをひいたキャセロールに鯛を置き、レモン小1ケ分の汁、続いてオリーブオイルを全体に振りかける。 5ーあらかじめ熱したオーブンに入れ、高めの温度で20ー30分焼く。できたてのアツアツを召し上がれ。 ※ここスペインでも鯛は高級魚。めでたいーなんて語呂合わせはないが、祝いやもてなしの食卓を飾る一品として珍重されている。日本ではお祝い事の折詰に入った冷たい姿焼のせいか、高いばかりでおいしくないという評判をよく耳にするのだが、レモン風味に味付けを変えてアツアツを食べてみる。鯛のおいしさ再発見だ。何かと人の集まるこの時期、是非試して欲しい。 |