スペインの村に行きたい!



POSADAS

 これからのスペイン通は村に行こう!”ということで、とあるサラマンカ近郊の村への紀行を取り上げたのは本誌創刊号(ほとんど幻の存在となっている)だった。これは何もあるばが先駆けではなく、現在スペイン内で静かに広まりつつある旅行のモードである。バカンスの行き先ベストテンに相変わらずマジョルカ、カナリア諸島、また海外ではモロッコ、中南米などがランク上位を占めているのとは反対に、国内の村々で静かで快適なカントリーライフを楽しもうという人が増えてきている。マドリッドなどの都会に住むヤッピーのカップルの夢は、いつか小さな村に自分達の小さなコテージを建てて、そこでのんびり自然の中で暮らしたいーというもの。インテリア雑誌などには、“お宅拝見”ということで、その夢を実現させたどこかのお金持ちが、すばらしく改造された田舎家のサロンでニッカリ笑っている写真がよく出ている。それができない人のためにモTurismo Ruralモというような、小さな村の紀行、村祭カレンダーなんかを載せた雑誌が最近になって発行され、けっこう売れているようだ。

ポサーダってなんだ?

 しかし村でのんびりしたいと思っても一番の問題は交通の便と宿泊施設。交通に関してはレンタカーがある。しかし宿泊となると今までは不安になる点が多かったのだが、最近になって各地方がTurismo Rural の流行にのって発行し始めたのが、“ポサーダ”なるもののガイドブックなのだ。

 ポサーダとは、古くは田舎の旅籠のこと。よく中世を舞台にしたヨーロッパ映画などにでてくる木賃宿のようなものである。しかし現在のポサーダに中世の小汚い旅籠のイメージを重ねてはいけない。これも村起こし運動の一貫なのか、外見はただの田舎の、それもかなり年期の入った一軒家なのが、中は小きれいなプチペンションにすっかり改造されているものが増えていている。バス、トイレ完備はもちろんのこと、部屋には暖房、テレビなどすべてが完備されており、スイートルームになると、天蓋つきのお姫さま仕様のベットを備えているところもある。こぎれいなレストラン、サロンには暖炉、バーもあり、休日の一時をのんびり過ごすためのシチュエーションはばっちりなのだ。実はこのポサーダには、昔修道院や田舎の豪族のお家だった所が多い。それゆえに、まずそのどっしりとした風格をそなえた数世紀前の建築はすばらしいし、サロンの調度品から家具まで、すばらしいアンティークで揃えているところもある。例えばレオンにある「ラポサーダ・デル・マルケス」はある古い修道院内に位置する旧病院を改造したもの。こぎれいな中庭、数々の調度品に囲まれたサロン、夜9時には聖堂からグレゴリオ聖歌が流れる。バス付ダブルルーム(朝食付)で8.000ペセタ。またソリアにある「ラカサ・グランデ・デ・ゴメス」は半世紀前に建てられた豪族の邸宅。建築様式から室内の家具、庭園まで植民地風に作られており、自慢の大きな暖炉のあるサロンにはバス付ダブルルーム6.500ペセタ。そしてポサーダの中には、昔の風車小屋などを改造した田舎屋もあり、本当のカントリーライフを楽しめるところもある。サラマンカ近郊の村にある「サンマルティン」もその一つ。石を積み上げてつくった厚い壁に、黒褐色の木枠が交差している“ムハルデ”というこの土地の典型的な建築様式で建てられたこの家の外観は、カスティーリャの平原の風景にいかにもマッチしている。すべての改装を地元の工房が、地元産の木材、鉄、石を使って仕上げたというこのポサーダ、蜂蜜色の木肌で覆われた内部には、何ともいえない家庭的な雰囲気がある。部屋は少し狭いが、木枠の窓からこぼれる日差しは柔らかく、また素朴な木のベットで清潔なシーツに包まれて“田舎の朝”を迎えてみるのもわるくない。バス付ダブルルーム5.000ペセタ。

ガリシアのパソ、グラナダのクエバ

 あるばが強力に推薦しているガリシア地方、この地方の伝統的な石造りの田舎家をPAZOという。カスティーリャのそれとは違い、もっと黒みがかった石を何層にも積み上げてつくった重厚な壁と木の窓のこの家は地元の典型的なものだが、田舎にいくとまだまだたくさん見ることができる。そしてポサーダと同じく、泊まることができるパソがたくさんあるのがうれしい。ガリシア観光局ではこのパソのパンフをつくっており、予約センターも完備している。数が多いだけにバリエーションも豊富で、価格はバス付ダブルが4.000から上は12.000まで。家によっては丸ごと借りることができるので家族、グループでの利用もできる。自然たっぷりの田舎でサイクリング、乗馬、ハイキングで汗を流すのもいいが、中にはなんと農作業体験コースを準備している家もあるので、ここははりきっておじちゃん、おばちゃんのお手伝いをしてみよう。

 いややっぱりアンダルシア、という人にはあのグラナダの白い洞窟の家に住むチャンスもある。例えばグラナダ市内から60キロいった小さな村グアディスには、アパートメントホテルとしてこの白い家を開放しているところが何軒かある。内部の設備もしっかりとしており、キッチン、バスルームなども整った家を1日から数週間単位で借りることができるのだ。お値段は2人から8人用まで家のサイズによって異なり、2人用の家が1日6.600ペセタ、1週間で33.300ペセタとなる。

なんで村なんかにいくの?

 たとえば春の初めの少し暖かくなった季節に近郊の村までドライブしてみよう。なーんにもない平原にひたすら続くまっすぐの道路を走ること数時間、いいかげん眠くなった頃に、とある村の入り口の看板が見えてくる。とたんに悪くなる村道を派手にボコボコいわせながら進んでいくと、道端で日向ぼっこしてたおばあちゃん連中が皆顔を挙げて運転席を覗き込む。外国人が珍しいというのでなく、車の通りが珍しいので知り合いの誰かが来たかと思うからだ。観光客とわかると、道を聞く前に向こうから聞いてくれる。こちらが少し言葉がわかる知ると、わらわらとそこら辺にいたおじちゃん達も集まってきて寄って集っていろいろ教えてくれる。村の歴史から名産品、都会に働きに出てる息子のこと、最近耳が遠いけど足はまだ丈夫なのよーなどなど。隣に座ったおばあちゃんのエプロンから暖炉の匂いや食べ物の匂いが混じった、なんともいえない懐かしい匂いがしてくる。学校の引ける時間になると、この集団に鼻たれ小僧たちが加わったりする。一度、こんな風に話しているうちに、その中で隣村に用があるという1人おじいさんを乗せていくハメになったことがあるが、車中、彼のきつい方言と歯が抜けているせいで何を言ってるのかさっぱりわからなかった。

 ちょうど村祭にいくと、とたんに年齢層がぐっと低くなる。昼の祭は別として、この若い連中が村に1軒しかないディスコで夜通し大騒ぎすることになるのだ。村の1軒家にミラーボールを吊しただけというこの村ディスコにも楽団(と呼びたい)が入り、耳をつんざくロックの流れる中、若い子同士はナンパに耽り、夜更かしした子供がその回りを跳ね回り、唯一音楽を聞いている(らしい)杖にベレー帽のおじいちゃんが端の列席を陣取っている。興が乗ってくると、誰彼構わずすぐ知り合い同士になり、不思議な仲間意識が漂よいはじめた。こんな風景を眺めながら常々村のフィエスタは良いとスペイン人の友人が勧めていた理由が分かったような気がした。

 結局スペインの土地柄を、スペイン人の人柄を生で感じることができるのが村なのだ。その土地の気候を肌で感じ、そこで取れたものを食べ、そこに育った人達と語らうことで、この国の人々の心の底に流れる何かに触れることができるだろう。現地に数週間から数ヵ月の中期滞在をする場合、これらの宿泊施設を利用してスペインの村を訪問するのは実は思ったより簡単。現地の観光案内所、旅行会社は豊富に情報を用意しているのでおおいに利用しよう。確かに今人気のパラドールよりはリッチ度は低いし、交通の便は悪い。でもバイタリティのあるスペイン通のあなたには、パラドールで同じ国の観光客の団体に囲まれて食事するよりも、田舎のメソンで地元料理をもりもり食べて、村のおじいちゃん達とワインを飲んで多いに語らって欲しいのだ。新しい旅の形を作るのはあなたなのだから。

Central de Informacio'n de Turismo Rural ( Castilla y leo'n) (902)203030
TURGALICIA (Central de reservas) (981)542527
Cuervas Pedro Antonio de Alarco'n (958)664986