ホームページNo3 前編アルゴット図書館ユーモア料理



ルゴット  He pillado resfriado...
「情熱の国スペイン」にも冬はあります。 これがけっこう寒い。 石畳から上がってくる“冷え”はじんじん靴底を通して伝わってくるし、 外で立ち話をしようものなら顔が張り付いたよういなってしまいます。 しかしこの寒さにも関わらず、やたらバルやディスコは混む ーいや夏より混んでいるかもしれません。 みんな家にじっとしているのが飽きるのか、 "Hace un frio que te cagas!", "Que rasca!" などと言いながらぞくぞくと入って来ます。 さて、そこでとりあえずの挨拶がすんで、"Que tal?" "Como andas?" と聞かれることになりますが、つい "Bien" と言ってしまうのが 答えのレパートリーの少ない外国人の悲しいところ。 しまいには「いっつもbienて言うけど本当か?」などと 鋭いつっこみを入れられたりします。 確かに「調子はどうだ」「いいよ」だといきなり会話が終わってしまう というもの。ここはやたら“嘆き”の多いスペイン人をまねて "Buah!" "Bueno" などと言ってみるのはどうでしょう。 話好きのスペイン人のこと、「おぅ、どうした?」と聞いてくれるはず。 そこから生きた会話が始まることでしょう。

  他にもいろいろレパートリーはあります。 例えば「どうにかやってるよ」というのに "Voy tirando" または "Tirando", "No nos quejaremos", それに "Aqui andamosモ" なんてのがあります。 たまには "Estoy cansado" と言いたいときもあります。 "Estoy hecho polvo"というのがまず学校で習う argot ですが、 少々お下品になってしまうのにかまわなければ、 estar hecho~の後にpur, papilla, una braga, mierda, などと入ります。 又、estar の後に molido, jodido, chungo などを入れて使うこともあります。

この寒さで風邪気味のせいかどうもかったるい、 なんて時は "Estoy pachucho" そしてとうとう本格的に風邪を引いてしまった、 という時の“ひく”には coger の代わりに pillar を使って "He pillado resfriado" となります。 (この動詞 pillar は使い方のバリエーション多し) 一言で風邪と言ってもいろいろありますが、 その強度順に挙げると resfriado < catarro < gripe となり、 どうしようもないほどひどいのになると gripazo などと大げさに言ったりします。

反対に絶好調の時にはどう言ったら良いのでしょうか。 "Estoy de lujo"  又は "Estoy de puta madre"  "Estoy a tope" などという表現はよくバルなどにいて聞く言葉です。 この寒さにもかかわらず、夜になると老いも若きもぞろぞろと 出かけていつもの仲間とおしゃべりしたり、 一杯引っかけたりする習慣はさすがスペイン。 “楽しんでらっしゃい!”というのは pasarselo bien と使いますが、 bien の代わりに bomba, pipa, なども入ります。

しかし送り出すほうのお母さんの心配はどこの国も変わりません。 "Abrigate, hijo! Vas a coger frio!" と叫びながら奥からマフラーか何かを持って追いかけてきます。 これがまた遅く帰ってきたりすると、"Pingo!"  とか "Golfo!" などと呼ばれてぶつぶつ言われる始末。 でもまあ何はなくとも母の愛、いざ風邪を引いたとなると 大騒ぎをして介抱してくれるのはこれまたお母さんなのですから。

これからまたセマナサンタが終わるまでは まだまだ厳しい寒さが続くスペインですーえ?もう風邪引いてるって? "Cuidate mucho, y que te mejores!.




 
ホームページあるば前編アルゴット図書館ユーモア料理



るば図書館
スペイン語の勉強を続けていくうちに、 いつかはじっくり原語で本を味わってみたいーと思うようになります。 でもいざ本屋さんに行っても膨大なその量にため息が出るばかりー。 ここでは新刊本の中から比較的難しすぎないものを選び、紹介しています。 今年こそ“1冊読破”に挑戦してみませんか?

◆ Historia de una gaviota (Tusquets Editores)
Luis Sepu'lveda
Un viejo que lei'a novelas de amor で世界でもっとも読まれているスペイン語圏の作家の一人となっている チリの作家、Luis Sepulveda の新作。 “8才から88才までの子供達へ”と副題にあるように、 彼が自分の子供達のために書き上げた初の童話です。 座礁したタンカーから流れ出した重油にまみれて 瀕死の状態となってしまった一羽のカモメ。 そのカモメは最後の力を振り絞って産み落とした一つの卵を、 港に住む大きな黒猫ソルバスに託しますー “飛ぶことを教えてやって欲しい”と言い残して死んでしまった後、 ソルバスの冒険が始まります。  美しい挿絵とシンプルながらもほのぼの、 やがてじんとさせるお話の展開。 文体も易しく、スペイン語初級、 でも本を1冊スペイン語で読破してみたいという人にはお勧めです。 難易度★

◆ Palabras para un cuerpo (Ediciones Hiperion)
Gonzalo Alonso-Bartol


1989年に Premio de Constitucion を、 1992年に Premio Esquio de Poesia 受賞のサラマンカ出身の作家の最新作。 "El amor" を探究する旅に出た作家は、 そこから湧き出す様々な感情を繊細なタッチで自分色に染めていきます。 言葉の彩りは、触れると壊れそうなガラス細工のようで、 そのせいか息を詰めて読んでしまいそうな迫力さえあります。

難易度★★

◆ Como se cuesta un cuento (Ollero & Ramos Editores)
Gabriel Garci'a Ma'rquez
彼の映画ファンには待望の新著作です。 彼の脚本作りの真髄となる部分を、 taller del gui溶 のスタッフとの対話形式で惜しげもなく語っています。 作品例を挙げて、その批評、また討論を展開していく形ですので、 読みやすく、分かりやすくなっています。 “脚本講座”の体をなしていますが、 彼の“創造”ということに対しての情熱、 人生観が親近感をもってうかがうことができます。

難易度★★







 
ホームページあるば前編アルゴット図書館ユーモア料理



ーモア  El dia de los inocentes

12月28日、スペイン国営放送の夜のニュースはいつもより早く始まった。 ニュースキャスターの顔触れは違うが、お馴染みの音楽、構成で始まり、 トップニュースが伝えられる。「今日午後7時、政府の発表により、 現在使用されている2千ペセタ札はすべて無効となり、 回収されることになりました。」その後、経済庁のスポークスマン (らしき人)の記者会見があり、偽造2千ペセタ札が 大量に出回っている現状を説明し、 「紙幣のナンバーが黒のものはすべて偽造紙幣であり、 一切回収の対象とはなりません。」(会場どよめきの渦)その後、 この突然の政府の決断に対する抗議デモの様子、 パニック状態となった銀行窓口の模様が伝えられ、 旧紙幣の交換方法、問い合わせ電話番号などが淡々と伝えられるー。 これがきつい冗談だとわかるのは、そのあとに続くエリツィン大統領が スペイン移民だったという告白、 人肉を扱っているレストランのレポートなど 絶対にありえない爆笑ニュースが続き、 ニュースキャスター2人が番組最後の音楽に合わせて 踊りながら終わってからだ。 この12月28日という日がスペインのエープリルフールにあたる ということを知らなかった人、 またクリスマスの宴会続きでぼーっとしていた人は簡単にだまされたはず。 そういう私も2千ペセタの偽造紙幣が出回っているという噂を耳にしていたし、 EU貨幣統合に向けて来年から無効になる貨幣があることは知っていたので、 一瞬はっとしたクチなのだ。 しかし毎年、この日各マスコミが競って 工夫を凝らし、“うそニュース”を伝えるのには“くそ真面目ニッポン” 出身者としては少々驚かされる。 日本で同じことを朝日やNHKがやるだろうか。 やったとしても“ふざけるな”の抗議電話が局に殺到するだけだろう。 文化比較論の中でも、ユーモアの違いというテーマはなかなか面白い。 たとえばスペインでいうと、あの chiste (笑い話)というやつ。 なんであの週刊新潮とかおやじ系の雑誌とかに載ってる、 「大人のユーモア」ページの小話程度にみな老いも若きも抱腹絶倒するのか。 テレビでもこのチステスペシャル番組が、坂東英二のようなおやじが司会で 2時間ももってしまうのだ。これはもうまさに文化の差というやつだと 実感させられる。 そしてもう一つのユーモアの違いに「からかいの笑い」がある。 この12月28日のユーモアもその一つだ。からかいの対象はさまざま、 政府要人、有名人などを引きずり降ろして徹底的におちゃらかすのは、 週刊コミック雑誌 El Jueves などが得意とするところだ。 (次号で述べるが、この雑誌は笑える。買いの価値あり) しかし権力者だけが対象ではない。聾唖者、目の不自由な人、 ジプシー、外国人なども対象となる。他国では噴飯ものであるが、 このユーモアには差別意識はない。 単なるその“違い”がユーモアの対象となるだけなのだ。 一応述べておくが、多種混合民族国であるスペインでは人種差別意識が低く、 障害者対象の社会保障制度もどこかの国よりはしっかりしている。 しかしこの種の笑いは“かわいそう”ということで日本ではタブー視されているし、実際あまり笑えない。ほとんど単一民族国家である日本では、“違い”はユーモアの対象とはならず、差別のきっかけになってしまうのだ。 ユーモア文化比較の世界は奥が深いのである。 95年の12月28日、さっそく新聞を買って “うそニュース”記事を探していたスペイン人が、 「これだこれ」と指差して笑っていた記事には大きく見出しが載っていた。 「日本の新進党総裁選挙ー投票権を販売」…。





 
ホームページあるば前編アルゴット図書館ユーモア料理



E L COCIDO  元祖コシードはこれだ!

冷たくかじかんだ手をあったかいスープ碗にすり寄せる。 ほうっと長い息を吐く。 ほんわりと立っていた湯気を待ったとばかりに深く吸い込む。 そしてゆっくりと最初の一口…熱く滑らかな感触が胃に広がり、 寒さに強張った頬が緩み、何とも幸せな顔となる…。 まるでラーメンか何かのCFのような光景だが、 皿の中味はソパデコシード。 この時期スペインの食卓に欠くことのできないコシードのスープである。

 材料の中味が溶け出したコクのあるだしに、フィデオ(パスタ) を入れたこのスープ、まさにラーメンを彷彿とさせるところがある。 実際わが家ではこれをベースに自家製ラーメンスープを作るのだが、 そんな話はまた別の機会にーということでこのコシード、 起源を尋ねてみると、カスティージャの厳しい冬の貧しい食卓へとたどり着く。 凍てつく寒さに負けず、厳しい肉体労働に耐えれるようにと、 限られた冬の蓄えを工夫し考え出されたこの料理、 かっては plato de pobre とも呼ばれた。 「昔は肉らしいもんといえば豚の脂身か痩せた鶏の肉、 チョリソが入ってりゃ何ともご馳走って感じがしたもんよ‥。」 なんていう話はちょっと昔までは珍しいことではなかった。 それが今日、選び抜かれた豊富な材料から作られる“コシード様” が高級レストランの特製メニューの一品になったりしているのは、 皮肉にも興味深い。カスティージャ地方で普通コシードと呼ばれているのは cocido madrileno。まずは前述のスープ、続いてガルバンソ等、 最後に肉類というのが一般的な食べ方のコースとなっている。 レオンの一地方には cocido maragato と呼ばれるとてもよく似た料理があるーというのか、 所変われば呼名も変わるというのか、普通とは反対に、 肉に始まり、ガルバンソ、そしてスープで終わる。 この妙な習慣の由来は明らかではないが、 その昔、戦の時にいざ敵襲となって食べ切れずに残すのなら、 実のある肉から始めてスープをあと回ししたことに始まったとかー。 そのせいか、その日にガルバンソと肉を、翌日スープ、 そして余った肉で作ったコロッケを食べるという家も少なくない。

 食べ方以上にレシピは色々だが、 ここではシンプルでベーシックなものを紹介しよう。 ガルバンソ(ひよこ豆)は少なくとも12時間前に塩入りの湯に浸しておく。 大鍋に牛のすね肉、髄のつまった牛骨、ハモンの骨、豚の脂身、 ガラ付の鶏肉と水を入れて火にかける。アクを取り、 沸騰し始めたら水を切ったガルバンソを入れて弱火で2〜3時間煮る。 チョリソ、人参、じゃがいもを加えて塩で味付けし、 再び1〜1.5時間煮る。 その間、キャベツは下煮してからにんにくの香り付けをした油で さっと炒めておく。モルシージャ(米入りの血のソーセージ)は湯がいておく。 レジェノ(前日のパンを卵でふやかし、 微塵切りのにんにくとパセリ、塩を加えてよく混ぜ、 匙ですくい油で揚げる)を作り、大鍋で一緒に煮る。 すっかり煮えたら汁を別鍋に漉し取り、 一煮立したところで極細のフィデオを入れ、 好みの柔らかさになる少し前に火を止めること。 キャベツは別皿に盛り、ガルバンソ等に添える。 モルシージャは肉類とともに大皿に盛る。 以上簡単に説明したが、かまどでじんわりとまでいかなくとも、 弱火でゆっくり時間をかけて煮るーここに旨味の秘訣はある! 一度は手間暇かけてでも作ってみる価値あり。 味わえば誰でもにんまり幸せ顔になること間違いなしの一品である。

津川正美